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八ケ岳地域は旧石器時代からのリゾート地なの?

山梨/長野周辺の地域戦略を紐解く

■観光資源豊富な八ケ岳エリア

八ケ岳南麓周辺では、過去に旧石器時代から縄文時代にかけての遺跡が数多く発掘されたという。はるか昔の営みをこの目で確かめたくなり、北杜市の考古学資料館、南牧村の民族資料館、旧石器時代の矢出川遺跡ほかを訪れてみた。この時代、狩猟のための鋭利な武器や、調理のための器具として黒曜石が重宝されたようだ。関東近辺で黒曜石の産地といえば、諏訪湖の北東にある和田峠が有名だ。資料館で話を伺うと、この付近に集まる古代人は、単に黒曜石を採取することに加え、夏場には、関東平野の南西部から狩猟や果実の採取とともに、避暑のために移り住んだ人もいるという。八ケ岳エリアは、2万年前からのリゾート地DNAが、この地域の居心地の良さを生み出しているのかもしれない。

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移動中、目にとまったのが大きなパラボラアンテナ。ここは野辺山宇宙電波観測所国立天文台)だ。空気の澄んだこの野辺山付近が観測に適しているのか、大小さまざまなパラボラアンテナが林立しているが、遠い宇宙のかなたを見つめるその姿に圧倒されてしまった。遥か彼方の星々から届く光は、その星の過去の歴史を物語っているという。ここ八ケ岳周辺は地球と星々の大昔の痕跡を感じ取れる場所ともいえるだろう。

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一方で、山梨県は、国内において日射量が豊富な地域でもある。このため太陽光発電の適地として着目され、平成18年、北杜市の中央高速道路沿いに太陽光発電の実証実験サイトが建設された。

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以来、八ヶ岳南麓では、風光明媚な田畑や森林を開発し、多くの発電所が乱立した。その多くは減税対策や短期の投資目的で設置されたものも多いと聞く。実際に新たな発電所として、開墾されてしまったキャベツ畑の風光明媚な景観は、見るも無残な姿となってしまった。いまでは、住環境や自然環境の破壊として大きな社会問題となっている。

■八ケ岳観光戦略のイメージ

富士山や南アルプスを一望できる素晴らしいロケーションをもつ八ケ岳周辺は、軽井沢諏訪湖など人気観光地へのアクセスもしやすく、長期に渡ってリゾート開発が行われてきました。また、観光山岳道路で結ばれた美ヶ原、蓼科、霧ケ峰、車山など畜産業を背景とした雄大な高原美は、多くの人々を惹きつけます。

八ケ岳の農業事業者から、地域の戦略について聞かれたことがあります。この時、Googleのビジネスモデルが思い浮かびました。中核となるのは、農業を実践する現場の若者たち。訪問する人々をとり込むことにより、八ヶ岳の魅力を顧客に具体的に伝えることができるのではないでしょうか。

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要約すると、以下のような図になります。

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一時期、「清里」を中心とした若者文化が出現したものの、経済状況の悪化により、一気に客足が遠のいたことがありました。単にひとつの地域に呼び込むのではなく、周辺の地域を連携させることにより、リゾート地としての潜在能力が向上していくものと考えられます。

■夏場のスキー場に人が集まる

スキー場は冬場のスポーツ楽しむための施設。しかし、夏場はどうしても客足が遠のきます。八ヶ岳のスキー場「サンメドウズ清里」では、夏場のスキー場を活性化させるために、山麓のレストランに「バイキング形式の地域自然食のレストラン」をスタート。さらに、地域の強みでもある景色の良さをアピールするため、スキー場の頂上付近に、新たなリラクゼーションエリア「清里テラス」をオープンさせました。

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これまで車いすを使う高齢者や障害者が、スキー場山頂まで行くなどということは考えられませんでした。このスキー場では、夏場にリフトに改造した車椅子用の搬器を常設。車椅子に乗車したまま山頂までいけることから、客足が伸びてきたようです。老いたご両親が山頂に降り立ち一望する姿に、感動する娘さんの笑顔が印象的でした。

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「新鮮な自然食品」と「絶景の憩いの場」という地域の強みを生かしたリゾート戦略は、非常に斬新に思えます。

■人々を魅了するリゾート地

八ケ岳周辺は、古代から続く避暑地に加え、地産地消が可能な農産物や太陽光や水力発電施設、宇宙を見つめる天文観測施設もあるユニークなリゾート地。さらに、四季を通じて楽しめるスキー場や野辺山100キロマラソンなどのスポーツイベントに加え、メルヘンチックな清里エリア、広々とした高原を満喫できる八ケ岳牧場、縄文時代の遺跡のある丘の公園清里ゴルフコース、花酵母の日本酒を造る武の井酒造、疲れをいやす多くの温泉施設などが充実。

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さらに赤岳(標高2,899m)を中心に連なる八ケ岳連峰は、初心者から上級者に至るまで登山を楽しむことができることから、自然美を生かした観光資源が豊富なコンパクトリゾート地として人々を魅了するでしょう。

 

 ■これからの観光戦略のあり方

企業は役割に応じていろいろな部門に分かれています。これまでは、たとえ部門間に情報の壁ができようとも、その役割と目標を達成することが重要でした。顧客情報に関していえば、その保管は部門ごとに行っていたわけです。顧客情報の内容が異なれば、各部門の顧客対応もまちまちになるのは当然のこと。しかし、顧客情報を一元化して情報共有すると、各部門は連携せざるを得ない状況になります。現在は、顧客を中心として組織化する企業が多くなってきたことから、顧客対応は大きく改善されてきました。

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観光についても同じことがいえるのかもしれません。これまでは各組織や団体が、個々に観光客や旅行客(顧客)を呼び込むことから、地域全体の良さを理解されるまでには至ってはいないといっても過言ではないでしょう。顧客への旅の満足度向上を中心におくことにより、個別のサービスを展開することができるのではないかというわけです。顧客を中核に、その周囲をいろいろな地域が特色を生かして連携し、組み合わせを変化させることで、地域の魅力を十分に発揮できるものと考えます。

 

八ケ岳周辺地域がもたらす社会貢献への新らたな取り組み、斬新な地域戦略、緻密な広報活動に期待したいと思います。

 

English Version 

 

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*1:南牧村美術民族資料館:野辺山駅

*2:矢出川遺跡:旧石器時代後期

*3:北杜市考古資料館

*4:野辺山宇宙電波観測所

*5: NEDO北杜サイト<撮影2014年>:現在の北杜サイト太陽光発電

*6:サンメドウズ清里内にあるレストラン<サンダンス>

*7:サンメドウズ清里山頂の清里テラス

*8:車椅子もそのまま山頂へ

*9:ビジネスの合間にゴルフを楽しむ:丘の公園清里ゴルフコース

*10:酵母による日本酒の醸造:武の井酒造